本来罪咎世界における人間は長命種だった。
創造神は創り上げた人間が築く世界を眺めたいと思った。なので楽をさせてあげるために魔法を使えるように、能力を得るために魔力を与えた。
そこまですると進化の過程を与える暇を与えずとも問題ないと考えている長命にさせた。平均寿命はざっと1000年くらいに見積もっていた。
この時は魔力のデメリットは一つもなかった。
人間も神を崇めていたから共存関係がしっかり築かれていた。
神々は人間を愛していたので人間が過ごしやすいようにと手を尽くした。求められれば権能も加護も与えた。
だけど人間は楽を求め続け、段々と神々に不満を抱くようになった。なかには我々が神になる!と豪語する者が現れ出し、神殺しまで起きてしまった。
そこで始祖神達は意見を出し合った。勿論なかには反対する者もいたが、最終的には人間への罰として魔力に毒を入れることになった。
それは魔力の回復量と許容量の制限、さらには"魔力を使えば使うほど寿命を縮ませる"というもの。
これにより人間は平均寿命が10分の1にまで削られてしまった。体内の魔力はある程度使い続けないと前者の制限により苦しめられることになるからである。
人間は毒を与えられた瞬間に魔力の許容量に苦しみ、嘆きながら神に許しを乞うた。
この時点で神々はかなり人間に呆れ果てていた。愚かな生き物を作ってしまったと。
それでも神々は人間を愛することを止められなかった。
なにより自分達が創り上げた存在を放っておけるわけがなかった。
神々は、毒を与える際、護るべき善き人間を救う処置として神に流れる血液を利用することで、解毒作用を施せるようにした。
しかし血以外…神の権能や加護は魔力を介する為に、人間には猛毒となってしまった。
"神に好かれた者は早死する"と囁かれ始めたのもこの時からだった。
その解毒法を人間が知ったのは毒を与えられた200年程後のことだった。
神と人間が愛し合い、間に子が生まれたのだ。
2人の間に生まれた子供は魔力の毒の影響を受けていなかった。
それを知った人間は、神の血こそが長命を得る方法にほかならないと判断した。実際にそうだったが、愚かにも神に敵対する者がまた増え始めてしまった。
神殺しが再び横行し始め、ついには反神国家たる氷の国による、始祖神以外の神々が全て殺されてしまう事件が起こった。
始祖神達は頭を抱えたが、生の神であるプリエールが提案した。
「もう僕たちでは手に負えない。新たな種族を作り、皆で神の座を降りてしまおう。人間達に自らの行動の愚かさを分からせるんだ」
と。
それに対して反論できる者は誰一人いなかった。神という存在である以上、いつ人間に殺され世界の均衡を崩してしまうか測り知れなかったからである。
しかし神という存在が世界の均衡を保っていた以上、1柱は残っていなければ崩壊する可能性があると皆は考えた。
そこで唯一権能が平等な立場であった罪の神アマルティアに世界の行く末を託すことにした。
そして残った神々は人間になるか、はたまた新たな種族…喰魂になるかを選び、堕ちていった。
喰魂は生の神プリエールの血液を媒介とし、魂を喰らうものとして改変された元人間であり…"神にもっとも近く、人間に畏怖を与える災厄"として生まれた存在。
そのため全ての喰魂の血にはプリエールの…神の血が流れ、同時に人間から派生させた為に魔力の毒を受け続ける、中途半端な存在となってしまった。
こうして神々は、3度のみの権能の使用権利のみを残して神の座を降りた。
人間になった側は人間を愛し続けているからこそ、見捨てられなかった者達。
喰魂になった側は人間に呆れ果て、どうなってもいいと考えている者達。
神の座を降りたとはいえども、血が本来の神のものであることは変わらない。
そしてどちらを選んだとしても、昔に自身らで人間に与えた毒を受けなければならなかった。
そのため元神々は人でありながら寿命が長く、決して老いることはない。
こうした経緯のもとで魔力に毒が生まれ、寿命の差異が生まれたのである。