__雨。
雲が太陽と月を隠し、闇へ誘うもの。そしてその闇に紛れ悪事を働く喰魂が増える時でもある。
そんな雨の、ある日の夜。一人の女性が赤い傘を差し、ステップを踏みながら楽しそうに建物の上を歩いている。
「ふふっ、雨の日はワクワクしちゃうわね。人がいつもより静かで、雨音が心地よくて……」
女性はその場でくるりと半周回ると同時に蹴りを入れる。するといつの間に背後に近付いていた喰魂に直撃し、吹き飛ばされる。
「……愚か者が沢山出てくるんだもの」
喰魂が反撃しようと攻撃を仕掛けるが、女性は霧のようにその場から姿を消してしまう。
喰魂が驚いたように辺りを見渡していると、女性は喰魂の背後に現れ、後頭部に銃口を突きつける。
「この雨の日に限って私を狙うなんて、勉強不足なのね。お馬鹿さん」
銃弾を放つと、喰魂は抵抗も出来ぬまま突っ伏してしまう。しかし微かに体は動いていた。
「簡単に死なせはしないわ。大丈夫、貴方は今から死ぬよりも辛い地獄を味わうことになるから」
彼女が放ったのは麻痺弾。致死性のない、喰魂を捕獲するための銃弾だった。
「相変わらずこの弾を装填する時だけ魔法が使えないから不便ね、文句言っちゃおうかしら。……あ、それより先にクラミツハ君に報告しないと」
女性はそう言うと通信端末を取り出し、クラミツハに通信を繋げる。
「クラミツハ君、例の喰魂を確保したわ。回収のために応援を呼んでくれる?」
『相変わらず仕事が早いなアリスさん。分かった、すぐ向かわせるから周囲に他の喰魂がいないか警戒しておいてくれ』
「は〜い、任せておいて」
女性……アリスはそう返事をしてクラミツハへの通信を切った。
「雨の日は私の専売特許だもの。ここからが本番よね」
アリスは愛用の銃に魔法の銃弾を込め、アリスの周囲に集まりだし、群れと化した喰魂夜行に銃口を向ける。
「私にバディがいない理由が分からない愚かな喰魂達には、現実を思い知らせてあげるわ」
アリス。"黒"の罪裁者であり、バディを組むことを拒む鎮救熒。
彼女の場所に応援が来た頃、周囲には麻痺弾によって倒れた喰魂の山が出来ていたらしい。
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