…これは、遥か昔の話。
「おいオブルーク、貴様は何故主...デュアルヴェインに仕えているのだ」
傲慢の喰魂、ヘレシウスは暴食の喰魂オブルークにそう質問した時があった。
オブルークはそんなことか、と口角を上げてこう答えた。
「俺は飯が食えなくて困ってた時があったんだ。そこを助けてくれたのが主だった。その恩返しとして仕えてる...それだけだぜ?」
オブルークの答えにヘレシウスは頭を抱えて呆れたようにため息をついた。
「…すまん、貴様に聞いた俺が悪かった」
「逆にお前はなんで仕えてんだよ、お前の性格を考えれば誰かに仕えるなんてそうそう無いはずだろ?」
オブルークの質問にヘレシウスは答えるのが嫌そうに眉を顰める。そして暫く間があり、「まあ貴様になら構わんか...」と溜息をつき、話し始めた。
「...俺は元々人間で息子がいたことは話しただろう」
「ああ、よく息子の話をしてたもんな」
「その息子が喰魂に狙われた時があってな。俺が丁度妻を亡くし、悪の喰魂狩りをしてた時期だったんだが…俺のことを恨んだ喰魂が代わりに息子を狙ったといったとこだ。大事な息子を殺される訳にはいかなかったからな、俺が代わりに喰われに行ったんだ。それで喰われかけてたところを助けてくれたのが主だった。」
「…そりゃまた大変だったな」
ヘレシウスの話を聞いたオブルークは眉を下げ、哀れむように言った。
「まあ契約を投げかけられてそれに応えただけだ。実際人間の時よりは強くなったから後悔はしてないさ。ただ...」
「…ただ?」
ヘレシウスは窓の外を眺め、目を細める。
「…あの時、息子を突き放してしまった。それだけは、後悔している。」
表情にはあまり出ていないが、その言葉から伝わる悲しみは声色と瞳が語っていた。
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