中央国アトルチュアの西部にある森に、"彼"はいる。
木の上でじっと獲物を見定める。
"彼"の視線の先には調査に来たであろう男性。辺りを見回しながら、怯えた様子で森を進んでいく。
「うーん……今日は彼奴でいっか」
"彼"はボソッとそう呟くと、指先から伸びる糸をぐっと引く。すると「うわっ!?」という叫び声とキリキリキリ…という音が同時に聞こえてきた。
「ヒッ……どうなってるんだこれは!ぐっ…助けてくれぇ!!」
男性は突如現れた巨大な蜘蛛の巣に引っかかり、上半身に巻き付いた糸はキリキリと音を立てながらじっくりと上半身を締め付けていく。締め付けている場所から血が噴き出すと同時に、男性の泣き叫ぶ声が聞こえた。
「うるさいなぁ〜そんなに叫んで疲れないわけ?」
"彼"は糸を操りながら木の上から降りる。その姿を見た瞬間、男性の顔はサッと青ざめた。
「お、お前は……"蜘蛛の喰魂"レドロット!!なんでこんなところに……」
"彼"...レドロットはその言葉に不愉快そうな顔をして糸をぐっと引く。男性はそれに対して泣きながら悶えた。
「弱者がオレのことを呼び捨てで呼ぶなよ、此処がいい狩り場だって聞いたからはるばるガランカから来てあげたのにさ〜」
レドロットはにっこりと笑みを浮かべ、真っ赤な瞳をギラリと光らせて男性を見つめる。男性は恐怖のあまり息を忘れているようだった。
「オレに喰われることに感謝してよね」
レドロットはそう言うとぐいっと思いきり糸を引っ張り、男性の体を真っ二つにする。肉体から溢れる血をぐいっと飲み、恍惚の表情を浮かべる。
「うん、やっぱり血は新鮮なのが1番だよね!ちゃんと魂も回収してっと……」
肉体を細かく切り分け、血を採り、真っ黒な袋に詰めていく。そしてぷかぷかと浮かぶ炎...魂を掴み、丸呑みにする。
「……この程度じゃダメだね、成長した感じがしないや」
呆れた様子でそう呟くと袋を担ぎ、森の奥に設置した拠点へと歩を進める。
「あとどれ位喰らえばあの人に近付けるかな〜……あはは!待っててね、グラミアさん」
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